甲状腺とは

甲状腺とは

甲状腺は首の前、喉仏のすぐ下に位置し、大きさが約4~5cm、重さは約20gの蝶のような形をしている臓器です、その働きは体の代謝を調節するホルモンを作り、ためておき、必要に応じて分泌します。甲状腺ホルモンは食物中のヨウ素(ヨード:わかめや昆布など海藻類に多く含まれる元素)を材料にして作られ、脳の活性化や体温調節、新陳代謝の促進、心臓や胃腸など消化管などの機能に関わっています。
甲状腺ホルモンは脳の下垂体という部分から分泌されるホルモン(甲状腺刺激ホルモン:TSH)によって調節されています。何らかの原因で甲状腺ホルモンが過剰にでてしまうと甲状腺機能亢進症・中毒症、逆に不足(少なくなって)してしまうと機能低下症といいます

甲状腺疾患にはホルモン異常(量が多い、量が少ない)と腫瘍があります

甲状腺ホルモンが過剰な状態になるとTSHが低くなります

  • ホルモンが作られ過ぎる(甲状腺機能亢進症)
  • ホルモンが漏れ出してしまう(甲状腺中毒症)
  • 甲状腺ホルモン剤の量が多すぎる

暑がり・汗かき、疲れやすい、動悸、息切れ、手足の震え、食べているのに体重が減る/増えない、下痢、筋力の低下、イライラ感や集中力の低下、月経異常や無月経、眼球突出や複視など多彩な症状を自覚します。
これらの原因となる疾患としてバセドウ病、亜急性甲状腺、無痛性甲状腺炎、妊娠による甲状腺機能異常、医原性甲状腺機能亢進症などがあり、最も多いのはバセドウ病です。

甲状腺ホルモンが不足すると、TSHが高くなります

寒がり、疲れやすい、むくむ・食べ過ぎていないのに体重が増えた/減らない、便秘、意欲の低下・無気力、物忘れ、便秘、脈がゆっくりになったなどの多彩な症状を自覚します。

原因となる疾患として

橋本病(慢性甲状腺炎)、ヨード過剰摂取(わかめや昆布の摂取過多、イソジン嗽液の多用)、甲状腺術後や放射線治療後の機能低下症、薬剤性甲状腺機能低下症などがあり、最も多いのは橋本病(慢性甲状腺炎)です。

甲状腺の腫瘍には良性と悪性があります

  • 良性腫瘍として
    甲状腺嚢胞、濾胞線種、腺腫様甲状腺腫
  • 悪性腫瘍として
    乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫があります。

喉の違和感を感じる、首にしこりが触れる、左右のどちらかが急に膨らんできたなどの自覚症状があります。
このような場合は細胞診検査が必要になりますので、総合病院に迅速にご紹介させていただきます。

副甲状腺疾患

骨粗鬆症

骨の中のカルシウムの量が減少し、鬆が入ったように骨がスカスカになり、もろくなる病気です。わずかな衝撃でも骨折をきたしやすくなるため、要介護状態になる大きな原因とされています。骨量は、20~30歳頃の若い時期をピークに、年を重ねるとともに低下していきます。この骨量が減少をきたすことによって骨粗鬆症と言われる状態になり、椎骨が体の重みでつぶれたり、背中が曲がったり、変形による圧迫骨折をきたしたり、ちょっとした転倒で骨折するといった事態を引き起こしてしまうのです。なかでも大腿骨近位部を骨折したりすると、体を支える働きが損なわれ、要介護状態にもなりかねません。但し、専門的な治療や適切な生活改善を行えば、骨密度の減少を改善し、骨折リスクを大幅に減少させることが可能になります。

早めの診断が大切です

高齢の女性を中心に、骨粗鬆症は年々増加の一途をたどっています。更年期以降になると、女性ホルモンの分泌が低下するため、骨粗鬆症のリスクが高まるのです。エストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。閉経に伴ってエストロゲンの分泌量が減少すると、骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつかず、骨がもろくなってしまうのです。女性の方は50歳になる前に一度は骨粗鬆症の精密検査を行いましょう。

骨粗鬆症の予防と治療

骨粗鬆症の発症には、加齢や閉経以外にも食事・運動習慣などが深く関係しています。そのため、食事療法や運動療法を積極的に取り入れて予防することが大切です。但し、骨粗鬆症との診断を受けた後は薬物治療が中心となります。骨の吸収を抑えたり、骨の形成を助けたり、カルシウム吸収を促進させたりする薬があります。また、腰や背中などに痛みがある場合は、痛みを除去する薬も用いられます。どんな薬を選び、いつから治療を開始するかについては、個々の患者様の年齢や症状の進み具合などを考え合わせながら判断されます。

内分泌疾患

下垂体疾患

下垂体は、多くのホルモンの働きを調節している部位で、エンドウ豆くらいの大きさで、前葉と後葉があり、それぞれからホルモンを分泌し生体の生命維持を司っています。
先端巨大症、下垂体腺腫、下垂体機能低下症、クッシング病、プロラクチノーマ、などの疾患があります。

下垂体機能低下症

下垂体機能低下症とは

下垂体が分泌するホルモンの量が減少することにより引き起こされる病気です。
下垂体から分泌されるホルモンのうち「副腎皮質刺激ホルモン」「甲状腺刺激ホルモン」「成長ホルモン」「黄体形成ホルモン」「卵胞刺激ホルモン」「プロラクチン」の、どのホルモンの分泌量が減少するかにより症状が異なってきます。

原因について

下垂体およびその上にある間脳の部位に何らかの障害が生じた場合に起こります。原因は腫瘍が最も多く、 炎症 、下垂体腺腫の手術、放射線治療などさまざまです。昔はお産の時の大出血が引き金となって出産後に発症することもありましたが、現在では少なくなっています。原因がはっきりしない場合や、遺伝的に起こることもあります。

  • 下垂体腫瘍
  • 下垂体への血液供給の不足(大量出血、血栓、貧血、あるいは他の原因による)
  • 感染症
  • 炎症性疾患( サルコイドーシスなど)
  • がんを治療するためのモノクローナル抗体(イピリムマブや関連する薬)による下垂体の炎症
  • 放射線照射(脳腫瘍に対するものなど)
  • 下垂体組織の外科的切除
  • 自己免疫疾患
  • 下垂体、あるいは下垂体につながる血管や神経の外科的損傷
治療法について

原因となっている病気(基礎疾患と呼ばれます。炎症、腫瘍など)がある場合は、それに対する治療が行われます。その上で、下垂体ホルモン欠乏が原因となっている症状に対し、主にホルモンの補充療法を行います。

末端巨大症

主な症候として

  • 手足の増大(指輪がとてもきつくなった、靴が履けなくなったなど)
  • 特徴的顔貌(眉弓部の膨隆、鼻・口唇の肥大、下顎の突出など)
  • 巨大舌
  • 発汗過多(汗がよくでる)
  • 視力障害(物が見えにくい)
  • 頭痛

など

クッシング病

主な症候として

  • 満月様顔貌
  • 中心性肥満 または水牛様脂肪沈着
  • 皮膚の進展性赤紫色皮膚線条(幅1cm以上)
  • 皮膚の菲薄化 および皮下出血
  • 近位筋委縮による筋力低下

など

プロラクチノーマ

主な症候として

女性

  • 月経不順 無月経 不妊
  • 乳汁分泌
  • 頭痛
  • 視力・視野障害

男性

  • 性欲低下 陰萎
  • 頭痛
  • 視力・視野障害

など

副腎疾患

副腎とは腎臓の上に位置する約2~3cmの小さな三角形の臓器で、一対存在しています。1つは約4~5g程度の小さな臓器です。人が生きるために必要なホルモンを分泌するとても大切な臓器となります。腎臓との連続性はなく尿を作ることはありません。内部の構造は皮質と髄質という2層の構造をしており、それぞれが別々のホルモンを分泌しています。
原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、副腎皮質機能低下症、アジソン病などの疾患があります。

病態

副腎疾患には大きく分けて2つの病態があります。ホルモンの分泌が多すぎる場合と少なすぎる場合です。分泌が多すぎる原因の1つに、副腎腫瘍(しゅよう)があります。
過剰になるホルモンの種類によって症状や病態が異なるため、それぞれに病名がついています。

  • 原発性アルドステロン症

副腎皮質からアルドステロンが過剰に分泌されるため、高血圧になります。高血圧と診断されている方の5~10%はこの原発性アルドステロン症が原因と言われております。また血液中のカリウムが少なくなる低カリウム血症という状態になることがあります。長い間アルドステロン過剰の状態が続くと、脳や心臓、血管、腎臓などの臓器に悪影響を及ぼすことがあります。
原発性アルドステロン症は低レニン性高アルドステロン血症を示す高血圧症であり、副腎静脈サンプリングにてアルドステロン過剰分泌が片側性か両側性かを確認して手術適応を決めます。片側副腎病変(腺腫:aldosterone-producing adenoma:APA 等)がアルドステロン過剰分泌の原因となる際は、片側副腎切除で治療します。

  • クッシング症候群

クッシング症候群/サブクリニカルクッシング症候群は,副腎皮質からコルチゾールの慢性的な過剰分泌により引き起こされる病態であり,長期間に渡る高コルチゾール血症の影響で,高血圧や低カリウム血症,耐糖能異常・糖尿病,肥満,心血管系疾患,筋力低下,横隔膜拳上による呼吸機能の低下,骨粗鬆症・病的骨折,易感染性,精神神経症状など周術期管理の上で様々な問題を抱えていることが多いです。また、尿中カルシウム増加のため尿路結石を生じやすく,易感染性と重なって閉塞性腎盂腎炎のリスクが高いことも認識しておく必要があります。

  • 褐色細胞腫

副腎髄質や交感神経節からアドレナリン、ノルアドレナリンが過剰に分泌され、高血圧や高血糖になります。頭痛、汗を多量にかく、体重減少、頻脈などの症状が特徴です。これらの病態や症状がいつも続くのではなく、発作的に出ることがあります。

  • 副腎偶発腫

偶発腫とは検診や他の病気の検査などを行った際に偶然見つかる副腎腫瘍のことをいいます。偶発腫の半数はホルモンを産生しないホルモン非産生腫瘍です。ホルモンを産生したり、腫瘍が大きくなったりする場合は手術が必要となることがあります。

副甲状腺疾患

副甲状腺とは、甲状腺の裏側の上下に2対、合計4個ある米粒サイズの臓器で、カルシウムの調節をする副甲状腺ホルモンを分泌しています。
原発性や続発性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、高カルシュウム血症、骨粗鬆症などがあります。